スタンとリオン


 オレさ、今でもたまに、思うんだ。どうしたってあの頃には戻れないし、精一杯なことしてたって、言えるけど、でもオレがもっと強かったら、リオンももっとちゃんと、オレを頼ってくれたんじゃないかなって。
 出会い方なんて、最悪だった。オレとお前は出会って早々に戦って、こてんぱんにやられてさ…あれ、マジで効いたぜ。それから何だかんだあって旅する事になったけど、僕の足を引っ張るなって、いつも言ってたよな。遠慮も戸惑いもなくティアラの電撃を流すし、短気だし、言葉だって優しくはなかったけど、それでもオレはリオンの強さを素直に尊敬してたよ。どうやってそんなに強くなったんだ?オレだって、じっちゃんに稽古をつけてもらっていたし、自分でも裏山に籠って修行してみたりしたけど、あんな風に迷いない太刀筋は、手に入らなかったよ。そう言った時にリオンは、僕とお前が同等なはずがないだろう、とオレを一喝したよな。そん時は、なんだよ、そんな風に言わなくたっていーじゃねーか、なんて思ってた。けど、そうだよな。オレが寝坊して妹に叱られたり、じっちゃんと仕事したり、バッカスと喧嘩したり、羊を追っ掛けたりしてる間も、お前はたった一人で、剣の腕を磨いてたんだろ?勝手なことを言うなってまた怒るかもな。

 あのな、オレさ、マリアンって人から、ルーティと二人で話し、聞いたんだ。彼女はちゃんと救い出したし、元気にやっているよ。だから、心配しなくたっていい。
 リオンは確かに、最低なことしたと思う。お前自身が一番よく分かってたんだろ。けど、なあリオン、お前はさ、選べないもの無理矢理選ばされて、吐きそうなくらい食いしばって、あんなボロボロになって。冷たい濁流に呑み込まれて、寒かったろ。お前の剣は相変わらず鋭かったけど、力、あんまり入ってなくて。倒れそうな身体、引き摺って…。どれだけ痛めつけられたのか、オレは知らないけど、なあ。
 お前、頭はいいけど、そういうとこ、バカだよ。オレだって、言われっぱなしじゃあないんだぜ?一人で何でも出来るなんて、そんな事、あるはずが無いだろう。それを無理矢理やり遂げてきたのかもしれないけど、そう考えるとリオン、本当にすごいな。でも、そんな強さなら、どんなに羨んでも、オレには手に入れられそうに無いよ。朝だって相変わらずリリスがいないと起きられないし、剣の腕だってまだまだだ。ディムロスももう居ない。本当に、オレは頭悪いしさ、でも、此処までやってこれたのは仲間のお陰なんだ。お前には分からないかな、リオン。本当にさ、ああ、なあ、もっと話をすればよかったかな。思い返してみたって、オレばっかり話してて、お前はあまり自分のことを話したがらなかったな。それでも良いんだ。リオンに伝えたい事が沢山、たくさんあるんだぜ?だから、文句を言いながら、オレを馬鹿にしながらだって良いんだ、聞いて欲しい。聞いて欲しいのに、なあ、なんでリオン、なんでお前はもう、いないんだろうな。

 オレは、リオンに何かあったら、すぐにでも駆けつけるよ。勿論、皆呼んでさ、全力でお前の力になってやる。オレ一人じゃお前は安心出来ないだろうから、皆で。だからさ、待ってるから、呼んでくれないか。それともまだ、オレの力は足らないか。リオンが安心して、スタンたすけてくれって、そう言えるように頑張るからさ。だから、次に困った事があったら、ちゃんと言えよ。
 目を閉じて、君を想うよ。リーネから摘んできた花を、此処に置いていくからさ。オレの仲間、オレの友達、



リ オ ン へ 贈 る

- end -

20100707

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