終わりは、皆に望まれてやって来るんだよ。泣きぼくろの少年ファルロスが呟く。囚人服のようなシマ模様のシャツを身に纏って、無邪気に"終わり"を語るその子供の姿はなんとも異質だ。
影時間の闇に驚く程馴染んだその姿。君に伝えたかったんだぁ、とベッドに腰掛ける。ブラブラと足を振るその仕草は紛れもなく子供らしいそれなのに、その唇から紡がれる言葉はなんと言う事だろう。毒の花が芽を出す、とか、比喩表現が過ぎて理解するのは難しかった。
「ねえファルロス、君の言う終わりって、何なのかなぁ?」
「終わりは終わりだよ」
「何が終わってしまうの?」
「うーん…分からないんだ。ごめんね、また思い出したら、一番に君に伝えに来るよ。」
だって僕は、君の友達だから。嬉しそうに、寂しそうに微笑むファルロス。その髪を慈しむように撫でれば、くすぐったそうに身を捩る。
傍にいるとこの子は言うけれど、日中は一体何処で何をしているんだろう。影時間が終われば、いつもこの子供は闇に融けるかのように消えてしまう。
そうは思えど、聞いたところで明瞭な答えは返ってこない。別に彼が日頃何処にいても、私とこの子供が友達であり、絆を築いている事実は変わらないのだから。
「終わりを止める方法はないの…?」
「分からないんだ。」
ファルロスは困ったように笑う。それからぴょん、と身軽に体を起こすと、また来るよと私をくるりと振り返った。
影時間に出来た友達。彼が一体何者であるのか、そんな事はどうだっていい。気味が悪い程馴染み、親しみを感じる少年が、結局は好きなのだ。
「終わり…か」
世界の終わりか、私の終わりか、何の終わりがやって来るのだろうか。
満月のシャドウを倒せば倒す程にファルロスは思い出してきている。幾月さんは十二体のシャドウを倒せば影時間は消えると言う。けれど、この矛盾はなんだろう。それとも彼の言う終わりとは、影時間の終わりと言う事だろうか。
そうだったら嬉しいな。
心の中で祈りながら、目を閉じる。
天田君のような小さな子まで戦いに参加している今、一刻も早く力をつけなくてはならない。リーダーとして、仲間として、誰かの役に立てるように、強くならなくてはならない。
ギュッとかたく目を閉じる。疲れによってまどろむ意識はたとえようもなく、そのまま眠りに落ちていった。
- end -
20100315
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