プライドの問題か、本音は見たいのにそれが邪魔をして思うようにテレビも見れて居ない天田君のために、毎週日曜日の夕方は一緒にフェザーマンRを見るようになった。すると予想外な事に一番食いついて来たのはアイギスで、誰より正確に時間を把握してCMの間の時間をカウントダウンをするくらい興味津津な様子。
フェザーマンは見始めると案外面白いもので、浮気がどうこうとか、割りとシュールな問題も出て来る戦隊物だ。ってゆうかこれは本当に子供向けなのか段々と疑問になってくる。土下座するフェザーマンのレッドを見ながら、私は密かにこの番組に寄せられる苦情のことを思った。良いのかなぁ、正義のヒーローってこんなに簡単に頭下げるっけ。
「こんな角度でマシーンが合体するのは物理的に不可能です。有り得ません。」
「あはは…」
フェザーマンが出す武器とか敵の攻撃のレーザーとかを見ては逐一質問してきたり、なるほどなーと多分間違った理解をしてる彼女。それに突っ込みをいれるか、誤魔化す私。そんな私達を物ともせずに、真剣に見入ってる天田君。三人並んでフェザーマンを見る私達の姿は最早見慣れたものになっていた。
日曜日、午前中は神社に神木さんに会いに出掛けて、フェザーマンを見てから夕ご飯を天田君と二人でわかつで済ませて一息ついてたら、ラウンジで荒垣先輩に話し掛けられた。おい、茶でも飲まねぇか、と、ぶっきらぼうに一言だけのお誘い。彼は確かに取っ付き難いけれど、食事に誘えば気軽に応じてくれる。実際は仲間――というか主に真田先輩だけど――を心配している優しいお兄さんのような存在だ。栄養とかを気にする辺り、お母さん気質も持ち合わせてるみたい。料理半端なかったもん。
カウンターに移動して、腰掛ける。先輩が用意してくれたお茶を飲みながら、どうしたのかなぁ、なんて呑気に構えてた私に、先輩はぽつりと呟くような声量で零した。
「天田はちゃんと飯食ってんのか」
「あ、はい、今日もちゃんと焼き魚定食を食べてましたよ」
でも、ピーマンは苦手みたいです。くすくすと笑い混じりにそう付け足せば、ふと先輩の表情が柔らかくなる。
真田先輩もそうたけど、荒垣先輩も天田君のことを気に掛けながら、どうしてか少し距離を開けているみたいだ。どうしてですかと尋ねる事は簡単だけど、何故か触れてはいけないような気がしていた。それは特に荒垣先輩に対して、天田君がぎこちないからだ。何か、あったのかなぁ。
「まだガキだな、アイツは…」
「あはは、可愛いですよね。弟が出来たみたいで、嬉しいです。」
温くなったお茶を一口。嫌味のない渋みが口の中に微かに残る。お茶を淹れるのもうまいのかこの人は。そう関心していたら、これからもそうしてやってくれ、だなんて、素っ気ない声音で荒垣先輩はそう言った。
どうしてそんな事を言うのか、真意を悟る事が出来ない私はただ、当たり前ですと頷く。ふと口許を綻ばせて、ぽんと私の頭を撫でた先輩は、少しだけ寂しそうに見えた。
- end -
20100323
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